タロットカードが入手しやすくなってからは、プロ占い師の多くの方が、偶然に表れた象徴を用いて事柄や事態の成り行きを占う「卜術(ぼくじゅつ)」に、タロットカードでの占いを取り入れていらっしゃいます。
タロットカード、最近ではオラクルカードを使われる方も少なくありません。
メインユーザーである女性が、タロットをはじめとするカード占いを好むからです。
そこで、今回はあえて中国生まれ、日本育ちの「易占い」について調べてみました。
東洋の叡智も、すばらしいものがあるのですよ。タロットと同じくらい、興味深い世界なのです。
【スポンサーリンク】
目次
そもそも「易って何?」
なんといっても、あの「岩波文庫」にもおさめられている学術書です。
一般的な書名は「易経」です。英語では易経の読み方をそのまま書名とした「I Ching」、または内容を踏まえて「the book of change」とされます。
「変化の書」ですね。
何かの決断を迫られるということは、言いかえれば、何かの変化を選択するということです(変化しない選択もありえます)。
その選択を引き出すための本が、「易経」です。
「経」は仏教だけのものではありません。
孔子さんを始祖とする、儒教の六経のひとつが「易経」です。
孔子さんが活動していたのは、紀元前の時代です。その時期に、「易経」をすでに読んでいたのです。
ユダヤ系の聖書よりも早く世に出てきたのではないでしょうか。
本来の著者は伏羲(ふっき)という人であるらしいとしていますが、伏羲さんは神話に出てくる神様なので、結局作者が誰なのか、現在では正しい情報はわからなくなっている状態です。
正しい情報かわかりませんが、中国の歴史の中で、学問を志す人は必ず読んでいる哲学の書であり、生き方のアドバイスを得るための書、また、武士たちが勝負に挑むときに決断をするための書なのです。
著者が誰だったかはわからなくても、現在まで伝えられてきたという事実が、易経のすごさを物語っています。
まず、テキストを用意しましょう
易経に関する本(テキスト)はどうしても必要です。
もちろん、占うたびにネットで調べる方法もあるとはいえ、すき間時間に目を通すくらいのことをしなければ、たとえ自分を占うだけだとしても、うまくいかないはずです。
タロットカードも単独の解説書があるように、易経も書店で買えます。
占い以外、東洋哲学のことも勉強していきたいようだったら、一度は読んでおいて損はありません。
『易経』岩波文庫(上・下巻)
現代文の訳はついています。安心です。
二巻本になっているのも、実は意味があります。
しかし、初心者の間は、占った結果が上巻か下巻かわからなくて、あっちこっち見ることになってしまう、めんどうなことの原因になっています。
「まとめてもいいのに」と思うのですが、原典が上下に分かれている、その分け方にも学術的に理由があるから、どうしても上下巻として残していかなければならないのでしょう。
この本は、東洋哲学の中では大事な書の1冊であり、研究者にはどうしても必要で、将来的にもおそらく絶版にはならないと思うので、購入はあとでも大丈夫です。
でも、一度は読んでおきたいものですね。
占い師さんの書かれた本を3冊紹介しましょう。これらは一巻本です。
黄小娥『黄小娥の易入門』(サンマーク出版)
1961年に出版された本が、21世紀に再出版されました(2005)。
当時は自ら占って決断をしようという風潮がまだなかった中でこの本がベストセラーになり、自分のことを「コインで占う」ことがブームとなりました。
著者は、多くの有名人を占うプロ中のプロです。
その気品のある文章が、それまであったであろう「占い師なんてまゆつばもの」という偏見をなくし、「占いは教養のひとつである」と多くの人の気づきをうながしました。
解説を六十四卦に絞り、わかりやすい占断例が盛り込まれています。
マギー『もっともわかりやすい易占い』(説話社開運ブックス)
基本の六十四卦に絞り、人間関係の事象を扱うのにふさわしい「反復生卦」を取り入れているのが、入門書の中では際だっています。
「人間関係の中で、相手が自分のことをどのようにみているのだろう」というテーマで占いたい初心者には最適です。
水沢有『すべてがわかる384爻易占い』(説話社占い選書)
サイズはコンパクトなのに、六十四卦にとどまらない、卦の中での6パターンの説明も加わって、とても本格的です。
「すべてがわかる」という書名にその姿勢が反映されていますね。
持ち歩くにはこれがいちばんでしょう。
古藤友子『自分で答えをだしたい人のはじめての易占 』(青土社)
この本は、東洋哲学の研究者さんの眼で、易占にアプローチした異色の1冊です。
易経そのものについても、今までの研究成果を踏まえ、充実した記述がなされています。
ターゲットを「自分で答えを出したい人々」=一般人に絞ってあるため、易経の日本語訳を含め、とても読みやすくなっています。
猫さまのお告げ研究会『ニャンともならないときの「易」の言葉 猫さまのお告げ』(辰巳出版)
猫好きの方には、こんなテキストもあります。
執筆している占い師の幸村鶴伎(ゆきむらつるぎ)さんの豊かな感性が、猫に乗り移ったかのような、猫の写真がたまりません。
ちゃんと算木マークが印刷されて、六十四卦の名前が書いてあるので、ここから本格的に易占いにつなげることもできます。
ネコの写真はあおいとり、岩内喜久子、斉藤美晴、田中舞、宮脇慎太郎と一流のネコ写真家のみなさんの作品多数!
【スポンサーリンク】
使う道具は何?
8面サイコロ
プロの方の対面鑑定では、8面サイコロを使うことが多いようですね。
東急ハンズなどのボードゲームコーナーに行くと、普通の8面サイコロは手に入ります。
今後、ずっと易占いをするつもりなら、専用のサイコロを買っておくと、習得が早くなります。
ネットで売っています。
小さなものなので、配送料もあまりかからないですむと思います。
易占い用サイコロは、このように、見慣れない漢字の書かれた8面サイコロと、数字の書いてある6面サイコロがセットになっています。
コイン6枚
もっとお気楽に【コイン6枚】という方法もあります。
この方法なら、道具のためのコストは全くかかりません。
1円玉だと軽くて、使い勝手がいまひとつなので、もう少し重いコインを6つ、用意しましょう。
いまのところは、コインの種類に制限はしないでおきます。
占ってみよう! とその前に、八卦とは何だろう?
易で占った結果を「卦」といいます。
「当たるも八卦当たらぬも八卦」の八卦って何でしょう。
易専用8面サイコロに書いてある文字です。
自然の作用、人間関係の事象など、あらゆることを8つに分けて象徴化しました。それを「八卦」とします。
始まりは、「陰/陽」の太極図があります。占い好きな方にはおなじみでしょう。これです。
あらゆるものが、陰と陽のどちらかに属するけれど、完全に陰になりきることも、陽になりきることもなく、陽が極まれば陰になるし、陰極まれば陽になるという考え方です。
それを転じて、私たちの人生を考えていくと、「陰と陽は50%ずつ」「吉も凶も50%ずつ」ということが言えると思います。
陰と陽をそれぞれ2つに分け、4つに分け、8つに分けていったのが、八卦です(一般には「はっけ」、占い関係者は「はっか」と読む方が多いです。詳細は、各テキストをお読みください)。
その八卦だけで占っていた時期もあるのですが、人間のするところをたった8つで分類できようはずもなく、ほどなく8と8を掛け合わせた64のパターンを作って、「六十四卦」として、先行きを占っていきました。
まず、その最初に八卦を覚えましょう。
天、沢、火、雷、風、水、山、地の8つです。これが、森羅万象のもとの要素、というわけです。
さきほどの8面サイコロに書いてあったのは、乾、兌、離、震、巽、坎、艮、坤の文字でした。
慣れるまでむずかしいかもしれませんが、覚えてしまえば慣れてきます。
以下のように自然現象と、サイコロの文字が対応しています。
天=乾 大空、そこを泳ぐ竜王
沢=兌 よろこびわらう
火=離 はなれる
雷=震 ふるえる
風=巽 そよぐ
水=坎 はまる、足をとられる
山=艮 とどまる
地=坤 万物をささえる大地
を象徴するのです。
実際にサイコロやコインを振ってみましょう
8面サイコロ
易占い用のサイコロには、赤字のものと黒字のものがペアになってありましたね。
サイコロは、赤を下、黒を上、とあらかじめ決めて振ります。
そうすると、一瞬にして、六十四分の一の割合で、卦を得ることができます。
動作として簡単ですし、集中力もそれほど続かなくてよいので、この方法はおすすめです。
コイン6枚
コイン6枚の方法も簡単なので、方法を紹介しましょう。
硬貨を、とりあえず6枚集めて手の中で振り、気持ちが集中したら、必ず下から縦一列に並べていきましょう。
易占いでコインを使う場合、表を「日本国」と書いてあるほう、裏を数字が書いてあるほうとするのが慣例的です。
表は陽で、裏が陰になります。
たとえば、○を表=陽とし、●を裏=陰として、このような結果になったとします。
これは53番「風山漸(ふうざんぜん)」です。漸の字が入っているように、「手順を踏んで進めるのなら吉」という答えが出てきました。
結婚も、先走りせず、少しずつプロセスを踏んでいけばいい結婚になります。
イーチンカードの誕生
ヨーロッパ圏で、タロットカードとミックスしたような、64枚組のイーチンカードが売り出されるようになりました。
もともと、64という2進法(これはのちのちコンピュータの考え方には必要になってくる)で切りのいい数字の枚数であることで、外国人の方に愛されているようです。
数学者のライプニッツも興味を示したとのこと。
ユングも集合的無意識を考えていく上で、易には深い関心をもっていたそうです。
日本人でも、イーチン・タロットで、複数枚のスプレッドを使い、ぴたっと当ててくる方にお会いしたことがあります。
逆に、易を長年続けている占い師さんは「易で得られた六十四卦の中にこそ、変化が書いてあるはずなのに、わざわざカードなんかにする必要あるのかしら?」と懐疑的です。
使いやすさも、人それぞれなのです。
さあ、その易で得られる「卦の中の変化」ってどんなことなんでしょうか。
易経の原典、それから古藤さんはそのことに言及しています。
水沢さんの著書のタイトル「384」にヒントがあります。
マギーさんの書かれた反復生卦も変化のひとつです。
以上、易占いを始める前の基礎知識をまとめてみました。
お読みいただき、ありがとうございました。次回をお楽しみに。